趣味は読書
Camelです。

テイト・モダンのMedia Networks: Beyond Popのコーナーで見つけたこの絵

「This is Radio Moscow … 1992-6」 Viktor Pivovarov

主にダークブルーで描かれた部屋、印象的なランプのオレンジの使い方をみて、
穂村弘さんのエッセイ『にょにょにょっ記』の表紙を思い出したことを前回書きました
一緒にこの本の中に登場したリカちゃんワールドについて思い出したのでご紹介します。

穂村弘さんを知らない人のために

  • 1962年生まれ
  • 現代短歌を代表する歌人の一人
  • 詩人、エッセイスト、翻訳家としても活躍

つまり、絶対にリカちゃん人形で遊んだことないよなって感じの
なかなか年配のおじさんなんですが
そんなおじさんがリカちゃん人形についてのニュースを考えている話です。

ちなみにこの本は日記形式で進みます。

8月11日 リカちゃん
 リカちゃん人形についてのニュースを見る。
 新たな家族の一員として「だいすきなおばあちゃん」が登場したらしい。
 へえ、と思う。
 今まで「おばあちゃん」いなかったんだ。
 確かペットの犬とかまでいたはずだから、当然いるもんだと思っていた。
 念のために公式サイトを見てみた。

◇リカちゃんファミリー
リカちゃん(香山リカ)
パパ(香山ピエール)
ママ(香山織江)
ふたごの妹(ミキちゃん・マキちゃん)
みつごの赤ちゃん(かこちゃん・みくちゃん・げんくん)
おばあちゃん(香山洋子)
オカメインコ(ピーちゃん)
トイプードル(プリンちゃん)
プリンちゃんの双子の子犬(ライムくん・レモンちゃん)

◇リカちゃんのおともだち(エミリーちゃん・ビッキーちゃん・みゆちゃん・マリアちゃん・さくらちゃん・アリスちゃん・ひなちゃん・レンくん)

 壮観だ。
 両親の職業やおともだちの将来の夢も「音楽家」「ファッションデザイナー」「ヘアスタイリスト」「メイクアップアーティスト」「トリマー」「トップモデル」「アイドル」と華々しい。
 この中では「レンくん」がボーイフレンド的な位置づけなのだろうか。
 あれっ、と思う。
 たしか以前は「わたるくん」じゃなかったか。
 でも、載ってない。
 不思議に思って他のサイトを確認したところ、リカちゃんにはこれまでに「わたるくん」「まさとくん」「イサムくん」「かけるくん」などのボーイフレンドがいたらしいことが判明した。
 リカちゃんにふられたことによって、彼らは公式サイトから姿を消してしまったのだろうか。
 さみしい。
 「リカちゃんファミリー」と「リカちゃんのおともだち」以外に「リカちゃんの元カレ」というカテゴリーがあってもいいんじゃないか。
 そうすれば夢の華やかさにリアルな切なさが加わって、リカちゃんワールドはいっそう完璧に近づくと思う。
 今のままではあまりにも一面的な華やかさでありすぎる。
 カタカナ職業にしか憧れないなんて。
 「わたし、リカちゃん。趣味は短歌。将来の夢は歌人よ」くらい言ってほしいものだ。
 無理か。
 無理だ。

『にょにょにょっ記』穂村弘

穂村さんはカタカナ職業に憧れていることを嘆いていますが、
「わたし、リカちゃん。11歳。元カレは4人」の方が驚きませんか?
穂村さんはさらに
8月13日 リカちゃん・その2
8月15日 リカちゃん・その3
とリカちゃんワールドのことを考えます。

8月15日 リカちゃん・その3
 リカちゃんワールドのことを考える。
 いっそのこと悪役なども登場させたらどうだろう。
 光あるところに影がある。
 それによってリカちゃんワールドはリアルな奥行きを増すんじゃないか。
 時代を反映したキャラクターとして、元カレは今はストーカーとかどうかなあ。
 名前は「みはるくん」。

『にょにょにょっ記』穂村弘

リカちゃんワールドが一気にサスペンス調になる。
いつかリカちゃんが大人になって結婚式をするなら、披露宴会場にはもちろん、チーム元カレのテーブルを作ってあげてほしい。
でも11歳で5人目の彼氏ってことは、仮に若くてピチピチの20歳で結婚したとしてもテーブル3つじゃ足りないかもな。
大人になった元カレたちはもちろん、職業「サッカー選手」「IT社長」「パイロット」いや「ユーチューバー」「ネオニート」「FXトレーダー」とかかな。
壮観だろうな。

他にも、消息不明のお姉ちゃん。行方不明のパパなど。
リカちゃんを中心にまわるリカちゃんワールドは調べれば調べるほど闇が深まります。

多分なんの役にも立たないけど穂村弘さんのエッセイ
『にょにょにょっ記』オススメです。


ちなみに『にょにょっ記』


『にょっ記』もあります。


中毒性の高い日記なので一気に読めます。
ぜひ。

では。